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映画の感想つらつらと。

医療現場の大きな抜け穴『グッド・ナース』

許されざる凶悪事件と医療現場への痛烈な批判。

 

※ネタバレあり

 

The Good Nurse
監督:トビアス・リンホルム/2022年/アメリ

 

エディレットメインの演技に圧倒されるが、決してそれだけではない意欲的な作品。

 

Netflix印付いてるけどネトフリらしい甘さ(詰めの甘さというよりは画面全体から漂う甘ったるい感じ。あくまで主観)がないのが良い。昔のサスペンス映画見てる感じがしてとても良かった。全体的にあっさりしている。

 

実際の事件についても軽く調べた。レストラン以降の話が主にオリジナルの要素に当たるのだろうか。犯罪を止めるのは警察ではなく医療現場であってこそだという警鐘。決して犯罪者を仕立て上げるようなものではなく、犯行を見て見ぬ振りをしてきた病院側の問題や告発者の奮闘にスポットを当てたのがこの手の作品では新鮮に映った。

 

医療現場で働く人の過酷な労働環境。1年間勤続しないと有休が与えられず保険も降りない。病気を患っていたとしても外れることができない現場。子供の面倒を見ることができないのでシッターを雇うために消えていくなけなしのお金。医療現場にも問題は山積だ。好きな医薬品を好きなだけ持ち出せてしまう致命的な欠陥を備えた薬品システム。問題の解決よりも病院の面子を優先し事件そのものを隠蔽する病院。警察でも介入できない構造は誰が見ても問題だと感じるだろう。この映画はそうした病院の管理体制を批判的に描いている。

 

病院で働く看護師が告発者として奮闘する姿には監督自らがこの事件を止めてやるんだという強い意志が込められていると感じる。史実の結末を映画で捻じ曲げる行為は凄惨な事件を弄ぶようにも見えなくはないが、そうでもしなければこの許されぬ現実を変えることはできないかもしれないし、作品を通して一人でも多くの人に現実を知る機会を与えるという意味では大きな責務を果たしているとも思う。