sugarspot

映画の感想つらつらと。

『ファミリア』を観て感じた私たちの問題

今回はいつもと異なり、映画に対してモヤモヤした点を綴っています。

 

※ネタバレあり

 

ファミリア
監督:成島出/2023年/日本

 

解像度の浅さに落胆した。映画を見ている最中からモヤモヤし続けている。上手く言語化できるか分からないけど一先ず吐き出してみたいと思う。

 

この作品は問題提起をしているはずなのに、その問題に加担しているという致命的な間違いを犯している。特にまずいと感じた点は非対称性ではないだろうか。日本人特有の被害者意識が浮き彫りになっていると思う。外国で外国人に意味も無く殺された日本人と国内で日本人に意味も無く殺された外国人。外国で起きる事件や災害では殊更邦人の安否を気にしているのに、日本国内で日本人が起こしている差別や搾取には目を瞑るのか?そうした問いかけや問題意識を根ざした作品だと思っていたがどうやらそうではなかったらしい。誠治とマルコスの両コミュニティで起きていることは同じはずなのに制作側の思いが誠治サイドに傾きすぎである。人種の違いを越えたつながりをテーマにしているのに血のつながりで贔屓をしている。日本人と外国人を対等に扱うのであれば明らかにマルコス達のコミュニティの描写が足りないだろう。息子夫婦を助けたい一心で多額の現金を政府に持ち込み懇願する誠治と、なけなしのお金をヤクザに持ち込み命乞いをするルイ。対称的であるように見えて全くそうでない構図はあまりにもグロテスクではないか。遺体と遺族が対面する場面も日本人である誠治はしっかり長尺で別れを惜しむ姿が描かれているのに対してルイの家族は僅かに映るのみ。セックスシーンで無意味に裸を映されるマルコスとエリカ。在日外国人に対する差別や搾取を問題にしている作品であるのにひとつひとつの映像が彼らに対する暴力性をはらんでいるような気がした。日本人が潜在的に持つ差別意識が透けて見えた。

 

人種を越えた繋がりを形成する物語を描きたいのであれば、有名無名に限らず日本人と外国人それぞれの役者に対する尊厳や、描かれる対象への理解や認識の程度に差があってはいけないと思う。


www.youtube.com