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映画の感想つらつらと。

少女の瞳は何を見る『ファイブ・デビルズ』

今日も彼女は香りを嗅いで過去に飛ぶ。

 

※ネタバレあり

 

Les cinq diables/The five Devils
監督:レア・ミシウス/2022年/フランス

 

なんて幸福係数の低いバックトゥザフューチャーなんだろう。母親と叔母の恋愛。少女が生まれたことで生じた亀裂。そして過去を訪れる少女自身が叔母を怪物に仕立て上げた張本人であったという事実。自分のルーツを辿ることで明るみになった真実。厳しい現実。

 

しかし当のヴィッキーは以前からその違和感に気づいていた。親の愛を受けていないとも感じていた。少女の誕生によって一度崩壊した関係は、奇しくも少女の存在によって修復への兆しを見せる。ジュリアの再訪によって止まっていた歯車が動き始める。

 

結婚してジュリアとは疎遠になったジョアンヌ。彼女は毎日決まって極寒の湖を泳いでいた。その場所はかつてジュリアと共に過ごした思い出の地だった。あの日の記憶を思い出すために、あの時の感覚が今も忘れらずにいるために、彼女はあの場所に帰り続けていたのかもしれない。彼女と久々の再開を果たしたジョアンヌは初めこそ距離を置いていたが本心には逆らえない。明らかに生き生きとした彼女の姿に夫と娘は何を思っただろう。

 

物語の終わり、ジョアンヌとジュリア、ジミーとヴィッキーはそれぞれの道を歩みはじめたように見える。「私を本当に愛したことはある?」核心を突いた娘の言葉は父親の意を固めるに十分なものだったはずだ。親子の愛が始まろうとするその時、静かにその光景を見つめる1人の少女。過去を辿る能力はヴィッキーの子供にも受け継がれたということだろう。


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