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映画の感想つらつらと。

『ザ・フラッシュ』電光石火でDC映画を駆け抜ける

※ネタバレあり

 

The Flash
監督:アンディ・ムスキエティ/2023年/アメリ

 

MCUが大好きな私はDC映画をほとんど観たことがない。でも全くないわけでもない。

 

ライアン・レイノルズの自虐ネタを発端に『グリーン・ランタン』を鑑賞しDCデビューを堂々飾り、『スーサイド・スクワッド』をTSUTAYAでレンタルしたときにはあまりのつまらなさに絶句。『アクアマン』と『ザ・スーサイド・スクワッド』は劇場で鑑賞し、DC映画の幅広さを身をもって体験した。

 

そんな私にもここ最近「フラッシュがすごい」という噂は届いていた。映画館に行くたびに「この映画が世界を変える」と大言壮語されているのは散々聞いていたので話半分程度にとどめいていたのだが、私の興味関心を引いた大きな要素があった。スーパーガールの存在である。

 

サッシャ・カジェ(つづりはSasha Calleだが日本語ではこう記しているサイトが多い)演じるそのヒーローに私は一目惚れした。怒りに震えるような鋭い目つきと顎まで届いた長い前髪。細身ながら筋肉も感じるしなやかな体躯。てっきり私はサッシャが女性版のスーパーマンを演じているのだと思い込んでいて、その姿を見た時に「女性がスーパーマンを演じるのか!」と感動していた。今思えば完全なる勘違いなのだが、とにかくその鮮烈なビジュアルが私の頭の片隅に残り続けていた。

 

そんな風にじわじわとフラッシュに対しての興味が湧き上がっていたところ「あのスナイダーカットの精神を継いでいる」という類の言葉が最後の一押しとなった。

 

ジャスティス・リーグザック・スナイダーカット版』は言わずと知れた長尺作品。DCファンではない私にですらその映画の評判は届いていた。真のジャスティスリーグと評されるその映画は、映画好きを自称する私には「4時間の映画」というだけで観て自慢したくなる存在感がある。

 

鑑賞していない理由はもちろん「DC映画を追っていない」ただその一つなのだが、映画フラッシュの人気、そして何よりスーパーガールの活躍を目撃したい想いに駆られてついに私はDC映画を鑑賞するため腰をあげた。下心に溢れた比較的軽い腰で私はDCユニバースを駆け抜けて行くのだが、その一部始終はTwitterで逐一報告していたのでよければご覧いただきたい。

 

 

さて本作の感想なのだが、昨今流行りのマルチバース(この文言を書くことすら少し鬱陶しく感じる)よりも些細な点に惹かれた良作だった。

 

まずopのフラッシュファン。もの凄いスピードで彼への愛を伝えられるの素直にすごいよ。例え好きな人が目の前に現れてもあんな即座に愛を叫べる自信ない。

 

少し話が逸れるけれどガーディアンズの『ホリデースペシャル』で地球に赴いたマンティスたちが現地のアベンジャーズファンと戯れるシーンあるじゃないですか。私あそこがかなり好きで。逃げ惑っていないただの市井の人々とキャラクターが交流する化学反応が面白くて愛おしく感じるんですよね。だからフラッシュに叫んでしまう彼女もとても良かった。コミカルに描かれているけど当人は本気だからね。真剣さが伝わってきて良い。

 

冒頭のジャスティスリーグの面々もかなり良かった。MCUで見たいものが詰まってたし、クライマックスバトルよりも盛り上がってたと思う。自然な流れで他のヒーロー達も登場するし、人助けに協力するくらいの距離感なのもいい。

 

MCUだとろくに連絡も取らないし、どこで何してるのかもお互い知らないですからね。規格外の脅威を前にした時にしか団結しないアベンジャーズと違って、ヒーロー初心者であるが故にちょこちょこ協力し合うジャスティス・リーグは人間味があって応援したくなる。

 

深入りしすぎない感じもあくまで仲間だという距離の取り方が良くて、これがアベンジャーズだと家族っぽくなるというか、ウェットになりすぎちゃうと思う。なんとなくアイアンマンがワンダーウーマンの縄にかけられても面白くなさそうなんだよな。強面のバットマンが巻かれている方がシュールな面白さがあって良い。元々ポップなMCUに対して硬派なDCEUという印象だったけれど、それイコール面白い/つまらないではなくてテイストの違い程度であるということが本作のジャスティス・リーグの場面で確信を持てた。

 

個人的にはこうしたメインテーマから逸れたところでポイントを稼いでいたのでマルチバースのメタ視点での面白さはあまり響かなかったのが正直なところだ。そもそも扱うテーマが食傷気味なので結構辛い。CGの甘さが目立つのも辛い。フラッシュのスーツはもちろん、バリーの顔がCGだと分かる時があったのは結構キツかった。

 

クライマックスのスーパーマンたちもぬるっとした質感で出てきた時は登場のインパクトよりもその違和感に気を取られてしまうほど。当時のファンはあれを素直に喜べたのだろうか。まあ映画フラッシュの評判はこの辺りを中心に広まっていったんだろうな。ただキャラクターをスクリーンに登場させる以上「本物がそこに立っている」ような質感を追求してほしかった。同時期公開のスパイダーバースは逆に当時の映像切り抜きでも許される土壌を作ってしまったので恐ろしい。

 

そして一番の注目、スーパーガール!

 

先ほども言及したけど彼女は「スーパーマン」ではダメだったんだろうか?あの世界におけるスーパーマンという位置付けで何も問題ないように思えるのだが、赤と青のスーツを纏った女性ヒーローというとスーパーガールを連想するのが普通だから仕方ないのか。

 

何度も殺されてしまうストーリーはなかなか辛かった。復活のゾッド将軍も、クライマックスのスーパーマンズもそうだが、本作のクリプトン人は話題作り以上の役割がないのは悲しい。バットマンが優遇されているだけに、あれを控えめな活躍だと感じるのは贔屓目でないと思う。サッシャのスーパーガールは凄まじいポテンシャルを秘めていたので彼女主役の映画をよろしくお願いします!

 

マルチバースと言いつつもタイムリープ的な演出で見せたフラッシュ。何でもできるようになるからこそ、何でも思い通りにしたくなってしまうのは人間の性。MCU「ホワットイフ」のストレンジもそうやって闇落ちしてたよ。過去は変えられないから今を精一杯生きるというのは大事。未来を向いていこうぜ。

 

ただ最後に戻った世界は結局本来とは違う世界線ということなんだね?ジョージ・クルーニーがマスクを被ってる世界もどこかにあるなんて。しかしこれからのDCユニバースとはもう関係ないんだろうか。あんまり期待はできないんだろうけど、スーパーガール含めて今後も扱ってほしいところだ。


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