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映画の感想つらつらと。

ワンダの処遇に物申す!『ドクター・ストレンジ マルチバースオブマッドネス』

この記事は『ワンダヴィジョン』で拗れたワンダ愛が爆発した者の感想ブログです。

※ネタバレ有り

 

DOCTOR STRANGE IN THE MULTIVERSE OF THE MADNESS
監督:サム・ライミ/2022年/アメリ

 

そもそも私は今作は、(マルチバースやストレンジを捕らえた謎の組織よりも)「ワンダヴィジョン」を経たワンダがどういう道へと進むのかを注目していたのだが、検討外れに終わったと言うほかない。

 

冒頭ストレンジがワンダを訪ねた際に彼女が発した「ルールを破ったのにあなたはヒーローになり私は悪になった。それって不公平じゃない?」という言葉は両者の立場を端的に表している。この点への言及があったからこそ、結局その通りの結末に終わったことに落胆した。

 

ダークホールドを手にし、ありもしない子供を手に入れる妄想に囚われてしまったワンダことスカーレットウィッチの所業は許されるものではない。報われない絶望感を満たそうと、身勝手にも他のユニバースを侵した彼女は罰せられて当然だ。幾多の禁忌を重ねたとしても別次元の子供達を自分のものにはできない現実と、それでも手を差し伸べてくれたもう一人のワンダはスカーレットウィッチにこれまでの行いを悔い改める機会となった。

 

しかし、だ。正気に戻った彼女が間も無くしてワンダゴアの砦と共に姿を消してしまったのはどうなのだろうか。全てのユニバースのダークホールドを消したとは言え、(現状手に入れられる情報だけで考えることしかできないが)「退場」してしまったのは良いのだろうか。自らの命を顧みずに下した決断は英雄的行動と称えられるのだろうか。「ストレンジは善でワンダは悪」という事実を乗り越え、晴れてヒーローとなるワンダを想像していただけに、それが叶わなかったのが残念でならない。ストレンジはチャベスに差し伸べたその手を、ワンダにも伸ばすべきだったのではないか。

 

別バースのワンダの台詞「私が愛します」と字幕の出ていた部分は英語では「Know they'll be loved」つまり「子供たちは愛されているから」とワンダを諦念・救済する言葉であった。今作でストレンジとワンダは共に受け入れ難い現実と向き合い前に進むという意味で鏡写しの関係と言える。とは言え、かたや諦め切れずにいた元恋人にキッパリとフラれたストレンジに対し、ワンダに降りかかる悲劇はあまりにも大きく、到底彼女一人で受け止め切れるものではないだろう。そんな執着に燃えるワンダを止められたのは別バースのワンダおよびその子供たちだった。別バースワンダの最後の言葉はスカーレットウィッチを残酷に突き放すようにも、「あなたはあなたの人生を送りなさい」と鼓舞しているようにも取れるが、どちらにせよワンダが最後にあの決断をしなければいけない程であったのかと疑問は残る。

 

ワンダは自業自得と言えるのかもしれない。これからまたワンダの姿を見ることができるのかもしれない。彼女の長い旅のほんの一幕なのかもしれない。だがワンダがこれまで負った精神的苦痛を振り返る度に、叶わぬ夢を追い求め崩壊していく姿を見ていて胸が苦しくなる。そして最終的に彼女を救えたのが(別人とはいえ)彼女自身しかいなかったという現実がなんとも皮肉的だ。

 

結局わざわざドラマで深堀りをしたのにこの仕打ちだったという点に納得がいかないのだが、フラットな視点で見ると、しかるべき報復を受けたと考えるのが適切なのかもしれない。魔女・スカーレットウィッチに堕ちてしまった以上、ヒーローになるチャンスなどなかった、と。

 

 

身も蓋もないことを言うと、来るべきXMENやインカージョン、ハウスオブMなんかでスカーレットウィッチが戻ってくるチャンスは大いに期待できる。だからといって今作での顛末が有耶無耶にされてほしくはない。気づけばMCUの中でも古参になりつつあるワンダの行く末に期待したい。