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映画の感想つらつらと。

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』運命と呪縛の糸

※ネタバレあり

 

Spider-Man: Across the Spider-Verse - Part One
監督:ホアキン・ドス・サンドス、ケンプ・パワーズジャスティン・トンプソン/2023年/アメリ

 

前作『イントゥザスパイダーバース』に続く第2作目。数々のスパイダーマンがマイルスのバースに登場する『イントゥ』に対して今作は『アクロス』=マイルス達が様々なスパイダーバースを行き来する。

 

描画表現も進化しており、キャラクターだけでなく、それぞれのユニバースがまるで違う描かれ方をしている。『イントゥ』は線幅や着彩方法くらいの差異に止まっていたのに比べると、『アクロス』ではラフに紙を切り取ったようなアウトラインを用いたり下書き線を残したような表現が秀逸だった。デザインスケッチのようにも見えて格好いい上にそれらが映像で動いてしまうのだから、もう訳がわからない。でもただただ格好いい。それでいい。

 

『イントゥ』以降、写実的描写とは違う平面表現を追求するようなアニメーション映画が増えたが、その先駆けなだけあってアート表現に関する発展は抜きん出て良い。随所に小ネタ、イースーエッグが配されていそうな(理解できない人にとってすらもあくまでそう思わせる)雰囲気は昨今のマルチバーストレンドと相まってカオスな空間を作り出している。『ホームカミング』のアーロンをここで取り上げる"丹念"な仕事ぶり。

 

全てのスパイダーマンが背負わなければならない運命・カノンイベント。スパイダーマンだから身内の死を乗り越えなければならないのか?そもそもの前提がかなり怪しいので次なる『ビヨンド』ではそのシステムの発端が解明されるのだろうけど。

 

マルチバースオブマッドネス』でも『エブエブ』でも思ったけど、別の自分の人生覗いても良いことないよね。隣の芝は青くて、無いものねだりを始めてしまうから。「私は私らしく」という精神と相性が良いんだろうけど、そりゃあ皆んな"完璧な自分"に憧れちゃうよ。  カノンイベントに加えて『アクロス』ではスポット、そしてもう1人のマイルス=プラウラー、合計3本ものストーリーが走っているのでこれをどう収束させていくかが期待であり不安要素でもある。

 

スパイダー・ソサイエティから抜け出した辺りでトイレに意識が向き始めて、そこから3回くらい「ここで終わりかな」と思うタイミングがあったのですごく焦らされた気分。2時間半の上映時間はやっぱり長いなと感じる。集中力がそんなに持たないので終盤はかなり疲れてしまった。それでいて結論を出し切らない生煮え感を残してパート2に続くので非常にじれったい。


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